夏休みの宿題を計画どおり進めるために今できること
前回は「②夏休み前半で一気にやる」と計画を立てている場合、その計画が破綻しやすい傾向にあるという研究結果をお伝えしました。一方で気になるのは、どうやったら計画を実行できるのか?ということだと思います。
そこで今回は、夏休みに「計画通りに学習を進めることができる子どもの特徴」の研究結果を紹介していきます。計画通りに学習を進める人って、どんな人を想像しますか?
2015年に「時間管理」ができる子どもほど「計画通りに学習を進めることができる」のでは?という仮説を立てて、研究が行われました。
計画通りに学習を進めるためには「時間管理」が大切
小学校5・6年生 206名を対象に「児童の時間管理が長期休暇中の計画や実際の学習時間にどのような影響を及ぼすか」を明らかにするための調査が行われました。(2015年)
この調査によって、「時間管理」が夏休みの計画とその実行について、良い影響を及ぼすことが明らかになり、以下の3つのことが示唆されています。
- 「時間管理」を行う子どもは宿題の計画と実行が一致しやすい。
- 計画的な時間活用をする子どもは,宿題の実際の取り組みは、「①毎日コツコツ、②夏休み前半で一気にやる」タイプになりやすく,無計画な子どもは「③夏休み後半で一気にやる、④無計画」タイプになりやすい。
- 「時間管理」を行う子どもの方が、夏休みの学習時間が長く、宿題をしっかりと行うために十分な時間をかけている。
では、「時間管理」とはどのようなことを指すのでしょうか。「小学生を対象とした時間管理能力を測るための質問項目」として、以下のような項目があります。
1、生活リズム確立するためのことについて
- 自分で時間を決め、宿題に取り組んでいるか
- 宿題をする時間帯を決めているか
- 学校に遅刻しないように早めに家を出るようにしているか
- よく時計を見て、時間を意識して行動するようにしているか
- 早寝早起きを心がけているか
- 宿題にどのくらいの時間がかかるかを考えるか
- その日の時間割やスケジュールを前日に確認するか
- 出かける前に忘れ物がないか家で確認しているか
- いつも5分前行動を心がけているか
2、目標設定や優先順位を決めることについて
- 宿題などやるべきことがあっても遊びを優先してしまうことがあるか
- 色々なことに気を取られて集中力が続かないか
- 先生の話を忘れてしまうことがあるか
- ダラダラと時間を過ごしてしまうことが多いか
- 宿題をやり始めてもすぐに気がそれてしまうか
- まだ時間があると思ってぎりぎりまで動かないことがあるか
- 先生からもらったプリントを無くしてしまうことがあるか
- 宿題の提出日を忘れてしまうことがあるか
非常に基本的なことですが、1のような生活リズムが確立されており、2のようなことがなく、優先順位づけをできている子どもが時間管理ができているとされています。
今回紹介した研究結果では「時間管理をすることで計画通り学習することができる」というよりも「普段から時間管理ができている子どもが、計画通り学習することができている」ということを示唆しているのであって、「時間管理が鍵だから、この夏休みは保護者が子どもの時間を徹底的に管理しよう」という対処療法を示しているわけではないことには注意が必要です。
むしろ夏休みに入る前から、または夏休みに入ってから、お子さんと話をコミュニケーションをとりながら、上記の質問項目を意識した生活を習慣づけることが大切です。
時間管理を行わないことのデメリットは宿題が終わらないことだけにあらず
さて、時間管理が計画通りに学習を進めるためにも大切になりますが、それ以外にも別の研究では「時間管理を行うことが、学習成績や生活充実感を高めることにつながる」ということが分かっています。
また、逆に「時間管理を行なわず、課題などを先延ばしにすることは学業成績や自尊感情を低め、不安を高める」ことも分かっています。
実際に前回紹介した研究によると、計画タイプの「③夏休み後半で一気にやる、④無計画」タイプの子どもたちが「①毎日コツコツ、②夏休み前半で一気にやる」タイプの子どもたちに比べて、ストレスを感じている傾向があるとされています。おそらく夏休み終わり頃になると、着手していない宿題が気になり、期日に終えることができるかどうか不安になったりすることが、ストレスの要因の1つになっていると考えられます。
夏休みが終わる頃や夏休み明けには精神的動揺が生じやすい傾向があり、文科省が注意を呼びかけています。夏休みの宿題がその要因となっている例もあるので、子どもたちの精神衛生を守る意味でも、時間管理が大切であることが分かります。
参考文献:
「児童の時間管理が長期休暇中の学習に及ぼす影響 (2018年井邑智哉,高村真広,岡崎善弘,徳永智子)
「夏休みの宿題を計画と実施の一致と取り組み方が子どもに与えるストレス」(2018年 岡崎 善弘, 井邑 智哉, 高村 真広, 徳永 智子)
「児童用時間管理尺度の開発と信頼性・妥当性の検討」(2020年 岡崎 善弘, 井邑 智哉, 高村 真広, 徳永 智子)
筆者
有名私立中高一貫校の教師で、ウィーケン!オンラインスクールのカリキュラム制作も担当。